廃業か承継か?札幌の経営者が知るべき第三者承継の進め方
「後継者がいない。廃業しかない」と思っていませんか?
帝国データバンクの調査によれば、2024年の北海道の企業休廃業・解散件数は2,715件。
これは過去最多であり、前年比20.6%増という数字です。廃業した経営者の平均年齢は71.9歳。
——判断を先送りするほど、選択肢は狭まります。
しかし同じ2024年度、北海道事業承継・引継ぎ支援センターの成約件数は141件(開設以来最多)。廃業を回避し、大切な会社を次世代へつないだ経営者が、確実に増えています。
その多くが活用しているのが「第三者承継」という手段です。
本記事では、後継者不在に悩む札幌・北海道の経営者のために、第三者承継の判断基準・具体的な進め方・見落としやすい実務ポイントまでを、税理士の視点から解説します。廃業という選択肢を決める前に、ぜひ最後までお読みください。
廃業と第三者承継、何が違うのか
廃業は「終了」、第三者承継は「価値を残す」選択
廃業とは、事業を完全に清算することです。在庫処分・設備撤去・テナント原状回復・従業員退職対応・未回収債権の処理など、想定以上のコストと手間が発生します。「廃業はコストゼロ」という認識は大きな誤りで、廃業にも相応の費用と時間がかかります。
一方、第三者承継(M&A・事業譲渡など)とは、会社や事業を親族・社内以外の第三者へ引き継ぐことです。会社そのものを売却するケースだけでなく、顧客基盤・従業員・許認可・技術・地域での信用といった目に見えない価値を丸ごと次の担い手へ渡せるのが最大の特長です。
特に札幌・北海道の中小企業では、長年にわたって築いてきた取引関係や地域密着の評判が大きな資産です。単純な清算では、それらは永久に失われます。
数字だけでなく雇用と取引先の継続も判断材料に
廃業を考えるとき、多くの経営者は「黒字か赤字か」だけに目が向きがちです。しかし実際の経営判断では、次の論点も欠かせません。
- 従業員の雇用継続 — 長年働いてくれたスタッフの生活をどう守るか
- 主要取引先との関係 — 廃業通知が取引先に与える影響
- 銀行融資の返済計画 — 残債をどう整理するか
- 個人保証の解除 — 経営者自身の資産リスク
- 許認可・技術の消滅 — 業界・地域に与える損失
第三者承継は単なる「売却」ではなく、会社に関わるすべての人たちの未来をどうつなぐかを考える経営判断です。
最新データが示す、今なぜ札幌で第三者承継が注目されるのか
北海道の廃業は過去最多水準、承継相談も過去最多
帝国データバンクの調査(2025年2月発表)によれば、2024年の北海道の企業休廃業・解散件数は2,715件(前年比20.6%増、過去最多)。廃業した経営者の平均年齢は71.9歳と上昇傾向が続いており、判断の先送りが廃業件数の増加に直結している現状が見えます。
一方で同じ2024年度、北海道事業承継・引継ぎ支援センターへの相談件数は762件(前年度比8.7%増)、成約件数は141件(前年度比21.6%増)と、ともに2011年の開設以来最多を記録しました。
全国でも、事業承継・引継ぎ支援センターの2024年度相談者数は23,000者を超え、累計では15万者超に達しています(中小機構、2025年発表)。第三者承継の現実性は確実に高まっています。
経営者の高齢化は現在進行形
帝国データバンクの「全国社長年齢分析調査(2024年)」によれば、全国の社長の平均年齢は60.7歳。社長交代率が3%台で低迷するなか、34年連続で過去最高を更新しています。2025年版中小企業白書でも、60歳以上の経営者が全体の過半数を占め、70歳以上の割合は2000年以降最高水準であることが示されています。
また、後継者不在企業が依然として約5割存在することも指摘されており、承継判断を先送りにするほど選択肢が狭まるリスクがあります。
後継者がいなくても引き継ぎ先を探せる時代に
以前は、「承継=親族内か社内昇格」が常識でした。しかし現在は、公的支援センターや民間M&A支援機関のインフラが整備され、第三者承継が現実的な選択肢になっています。
中小企業庁はM&A支援機関登録制度(2021年創設)を設け、中小M&Aガイドライン(第3版)を制定するなど、安心してM&Aに取り組める環境整備を進めています。
公的支援制度と補助金:使える制度を知っておく
北海道事業承継・引継ぎ支援センター
国(経済産業省北海道経済産業局)の委託を受けた公的相談窓口です。マッチング支援・事業承継計画の作成支援・制度紹介まで、無料でワンストップ対応しています。相談窓口は札幌市中央区の北海道経済センター内にあり、道内企業が相談しやすい体制です。
札幌市事業承継マッチングポータル
札幌市は「札幌市事業承継ポータル」を運営し、譲渡希望者と譲受希望者の橋渡しを行っています。交渉段階では北海道事業承継・引継ぎ支援センターと連携する体制を整えています。
事業承継・M&A補助金(2025年度)
中小企業庁が運営する「事業承継・M&A補助金」は、事業承継を契機とした新しい取り組みや経営資源の引継ぎを支援する制度です。2025年度は補助上限額が引き上げられ、最大2,000万円まで支援を受けられる枠も設けられています(一定の要件を満たす場合)。通常の専門家活用枠は600〜800万円が上限です。
📌 ポイント:M&A補助金の対象となる専門家費用は、中小企業庁M&A支援機関登録制度に登録された支援機関が関与した案件に限定されます。支援を依頼する際は、登録機関かどうかを必ず確認しましょう。
【比較表】廃業 vs 第三者承継
| 比較項目 | 廃業 | 第三者承継 |
|---|---|---|
| 目的 | 事業の清算・終了 | 事業・価値の継続 |
| 従業員の雇用 | 原則、全員解雇 | 継続雇用の交渉が可能 |
| 取引先への影響 | 取引関係が消滅 | 継続の可能性あり |
| コスト | 退職金・撤去・解約・在庫処分など発生 | 仲介手数料・専門家費用が発生 |
| 売却収入 | 残余財産の分配のみ | 譲渡対価を受け取れる可能性あり |
| 個人保証 | 別途整理が必要 | 交渉によって引継ぎが可能な場合も |
| 許認可・ノウハウ | 消滅 | 引継ぎが可能な場合あり |
| 時間・手間 | 清算手続きに時間がかかる | 準備〜成約まで通常6ヶ月〜1年程度 |
| 経営者の心理的負担 | 「終わり」という喪失感 | 「次へ渡す」という達成感 |
| 公的支援・補助金 | 廃業・再チャレンジ枠の補助金あり | M&A補助金(最大2,000万円)が活用可能 |
🔎 この表の見方:どちらが正解かではなく、「自分の会社には何が残せるか」「誰を守りたいか」という視点で選択することが重要です。
第三者承継の前に整理したい会社の数字
税務顧問の視点で「見せられる決算」に整える
買い手(譲受希望者)が最初に確認するのは、将来性だけでなく足元の数字の信頼性です。確認される主な項目は以下の通りです。
- 売上推移(直近3〜5期)
- 粗利率・営業利益の安定性
- 借入残高と返済スケジュール
- 役員報酬・節税策の内容
- 月次試算表の整備状況
ここで重要なのが、決算対策を「税金を減らすためだけ」ではなく「承継しやすくするため」に見直すことです。過度な節税で利益が見えにくい状態は、買い手の評価を下げる要因になります。
前田泰則税理士事務所では、承継を見据えた月次整理・財務体質の整備を早期から支援しています。
資金繰りと銀行融資は早めに洗い出す
第三者承継では、次の金融面の論点が成否を大きく左右します。
- 銀行融資の有無と金融機関との関係:引継ぎ後も融資が継続するかどうか
- 返済スケジュールの安定性:買い手が安心できる返済計画か
- 運転資金の安定性:資金繰りが不安定な企業は引継ぎ自体が困難に
- 月次試算表・資金繰り表の整備:金融機関・買い手双方への説明材料として必須
税理士は、税務対応だけでなく、銀行融資に耐えうる資料づくりや資金繰り管理においても重要な役割を担います。
見落としやすい実務ポイント
従業員・取引先への説明はタイミングが命
承継案件において、情報管理は最重要課題のひとつです。
- 早すぎる公表 → 従業員・取引先に不安が広がり、離職・取引停止のリスク
- 遅すぎる説明 → 「後から聞いた」という不信感が残る
誰に・何を・どの順番で伝えるかを事前に設計し、従業員・主要取引先・金融機関それぞれへの説明タイミングとメッセージを整えることが不可欠です。
特に札幌・北海道の地域密着型ビジネスでは、人間関係の継続性が事業の存続に直結します。数字以上に、コミュニケーション設計が第三者承継の成否を分けます。
個人保証・自社株・契約書の確認が成否を分ける
中小企業の承継では、会社の数字だけを見ていては不十分です。以下を事前に確認・整理しておきましょう。
- 経営者の個人保証:金融機関との交渉が必要
- 自社株の評価と譲渡スキーム:税負担に直結するため、税理士との事前設計が必須
- 会社所有不動産・リース契約:引継ぎ後の権利関係の整理
- 就業規則・雇用契約:買い手が確認する重要書類
- 株主構成:少数株主がいる場合は事前整理が必要
自社株評価や譲渡スキームの事前準備の差は、そのまま経営者の手残り(実際に受け取れる金額)に直結します。
廃業を選ぶ前のチェックリスト
「廃業しかない」と思っている方でも、次のチェックリストを確認してみてください。一つでも当てはまれば、第三者承継の可能性があります。
▼ 会社の「価値」チェックリスト
- 固定客・リピーター顧客がいる
- 継続契約(定期取引)の比率が高い
- 地元や業界での認知・ブランドがある
- 熟練した従業員・職人がいる
- 仕入先との長期取引関係がある
- 業界特有の許認可を保有している
- 独自のノウハウ・技術・レシピがある
- Webサイトやデジタル集客基盤がある
- 設備・機械が稼働状態にある
- 特定エリアでのシェアがある
💡 ひとこと:財務諸表に現れない「見えない価値」こそが、買い手にとって最大の魅力になるケースがあります。まずは「何を残せるか」を棚卸しすることが出発点です。
▼ 廃業コスト vs 承継コスト 比較表
| 廃業でかかる費用 | 承継でかかる費用 |
|---|---|
| 従業員退職金・解雇予告手当 | 仲介手数料(成功報酬) |
| 設備・内装の撤去費用 | 専門家費用(税理士・弁護士等) |
| テナント原状回復・解約違約金 | デューデリジェンス(調査)費用 |
| 在庫処分・廃棄費用 | 登録免許税・印紙税等 |
| 未回収債権の損失 | ※M&A補助金(最大2,000万円)で一部補填可能 |
| 廃業後に失われる将来利益 | — |
事業承継を成功させる進め方
STEP 1:現状整理と「何を残したいか」の明確化
最初に必要なのは、売上や利益の数字だけでなく、「自分が何を守りたいのか」を整理することです。
- 従業員の雇用を守りたい
- 長年の屋号・ブランドを残したい
- 借入を整理して身軽になりたい
- 地域のお客様への供給を続けたい
目的によって、最適なスキーム(株式譲渡・事業譲渡・会社分割など)が変わります。
STEP 2:税理士・会計事務所への早期相談
事業承継は、準備を始めてから成約まで通常6ヶ月〜1年程度かかります。早ければ早いほど選択肢が広がります。税理士は月次数字・税務リスク・資金繰り・銀行融資対応まで整理できるため、初期段階の司令塔として機能します。
中小企業庁も「まず身近な支援機関へ事業承継の意思を伝えることが重要」と示しています。迷いがある段階でも相談を始めることで、第三者承継を含めた選択肢が現実的になります。
STEP 3:公的支援センターへの登録・マッチング
税理士との方向性確認後、北海道事業承継・引継ぎ支援センターや札幌市事業承継マッチングポータルに相談・登録します。公的機関は無料で利用でき、信頼できる買い手候補の紹介が期待できます。
STEP 4:デューデリジェンスと条件交渉
買い手候補との初期面談・概要資料の提供を経て、詳細調査(デューデリジェンス)に進みます。この段階では、事前に整えた財務資料・契約書・株主構成が直接交渉力に影響します。
STEP 5:基本合意・最終契約・引継ぎ
条件合意後、基本合意書・最終契約書の締結、クロージング(引継ぎ)を行います。承継後の一定期間は、現経営者が引継ぎのサポートを行う「アーンアウト期間」を設けるケースも多くあります。
札幌・北海道で相談先を選ぶポイント
地域事情と中小企業実務の両方を理解しているか
第三者承継は、一般論だけでは進みません。札幌・北海道特有の事情として、次のような背景があります。
- 商圏が広く、エリア限定のブランドが形成されやすい
- 人材確保が都市部より困難で、熟練従業員の価値が高い
- 農業・水産・建設・観光など地域産業特有の許認可・慣行がある
- 冬季の資金繰り変動が大きい業種が多い
これらの地域特性を理解したうえで、税務顧問・銀行融資・資金繰り・決算対策を横断的に見られる税理士が相談のクオリティを決定的に左右します。
承継後まで見据えた支援かどうかを確認する
事業承継は、成立がゴールではありません。本当の意味での成功は「承継後」にあります。
- 引継ぎ後に売上が維持できているか
- 従業員が定着しているか
- 金融機関との良好な関係が続いているか
- 月次の数字管理が適切に行われているか
事業承継後の月次管理・銀行融資・資金繰りまで一体で支援できる体制があるかどうかを、面談前に必ず確認しておきましょう。
前田泰則税理士事務所への無料相談
廃業か、第三者承継か。迷っている段階こそ、早めの相談が大切です。
前田泰則税理士事務所では、札幌・北海道全域対応で、以下のご相談を承っています。
- 税務顧問:月次の数字管理・決算対策・承継を見据えた財務体質の整備
- 銀行融資支援:金融機関への説明資料作成・融資交渉の補佐
- 資金繰り改善:キャッシュフロー管理・試算表・資金繰り表の整備
- 第三者承継サポート:現状整理から専門家連携まで、初期段階から伴走
- 決算対策:承継しやすい決算書へのブラッシュアップ
【無料相談受付中】まずはお気軽にお問い合わせください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の事情によって最適な判断は異なります。具体的な対応については、必ず専門家への個別相談のうえでご確認ください。
