【2026年版】生前贈与ルール|持ち戻し早見表・比較表で徹底解説
2024年1月から、相続税・贈与税に関する大きな改正が始まりました。生前贈与の「持ち戻し期間」が従来の3年以内から最長7年以内へ段階的に延長され、同時に相続時精算課税制度には年間110万円の基礎控除が新設されました。
2026年は、引き続き3年ルールが適用される最後の時期です。しかし2027年以降は持ち戻し対象期間が伸び始めるため、「いま始めた贈与が将来どこまで影響するか」を時間軸で把握することが、資産防衛の第一歩となります。
本記事では、国税庁の一次情報に基づいたファクトチェック済みの解説と、中小企業オーナーの事業承継・銀行融資・資金繰りを踏まえた実務的な活用法を、比較表・早見表とともにお届けします。
この記事でわかること
- 生前贈与加算「7年ルール」の経過措置と2026年時点での正確な持ち戻し年数
- 延長4年分「合計100万円控除」の正しい理解
- 相続時精算課税の年110万円控除と暦年贈与の110万円との違い・選択の考え方
- 中小企業オーナーの自社株承継・銀行融資への影響
生前贈与新ルールの全体像|2026年はどんな「移行期」なのか
7年ルールへの移行:まず大枠を押さえる
生前贈与新ルールの核心は、相続開始前の「持ち戻し期間」が3年から段階的に最長7年へ延長されるという変更です。ただし、この延長はすぐに完全適用されるわけではなく、2031年1月1日以降に相続が発生するケースから本格化します。
2026年現在は、3年ルールが維持されている最後の時期です。一見すると「まだ急がなくてよい」とも取れますが、2027年以降に相続が発生した場合は2024年1月1日以降の贈与がすべて加算対象となるため、2026年のうちに将来設計を固めることが戦略上きわめて重要です。
生前贈与新ルールが中小企業オーナーにとって重大な理由
中小企業オーナーの場合、自社株式・事業用不動産・個人資産が複雑に絡み合います。持ち戻し期間が延びると、相続時の税負担が当初の想定を大きく超えるリスクが生じます。
さらに、自社株の移転タイミングは銀行融資の審査にも直結します。税務顧問が相続税を単独で考えるのではなく、銀行・家族・後継者と同じ未来図を共有しながら設計することが、2026年以降の生前贈与新ルール時代の必須条件です。
持ち戻し期間早見表|死亡年別・正確な加算対象期間
下表は、国税庁「令和5年度相続税及び贈与税の税制改正のあらまし」に基づく正確な経過措置の整理です。
📊 表1:持ち戻し期間早見表(相続発生年別)
| 相続発生時期 | 暦年贈与の加算対象となる贈与 | 実質的な加算年数の目安 | 延長4年分100万円控除 |
|---|---|---|---|
| 〜2023年12月31日 | 相続開始前3年以内の贈与 | 最大3年分 | 対象外(旧ルール) |
| 2024年1月1日〜2026年12月31日 | 相続開始前3年以内の贈与 | 最大3年分 | なし |
| 2027年1月1日〜2030年12月31日 | 2024年1月1日〜相続開始日までの贈与 | 4〜7年分(年々増加) | あり(合計100万円控除) |
| 2031年1月1日以降 | 相続開始前7年以内の贈与 | 最大7年分 | あり(合計100万円控除) |
🔑 ポイント解説
- 2026年死亡の場合:従来の3年ルールがそのまま適用。2024〜2026年の贈与のみ対象。
- 2027年死亡の場合:2024年1月1日以降の贈与が全て対象(最大約3〜4年分)。持ち戻し拡大がスタート。
- 2028年死亡の場合:2024年1月1日以降で約5年分が対象。
- 2030年死亡の場合:2024年1月1日以降で最大約7年分が対象となるが、完全7年ではない。
- 2031年死亡以降:完全な7年ルール適用。
※「100万円控除」は毎年ではなく、延長された4年間(3年超〜7年以内)の贈与の”合計額”から一括で100万円を控除するものです。
⚠️ よくある誤解:「100万円控除=毎年100万円が非課税」ではありません
延長された4年間の贈与を合計し、その総額から100万円を差し引いた残額が加算対象です。たとえば4年間で合計120万円の贈与をしていれば、加算される金額は20万円となります。
暦年課税の7年内加算とは|仕組みと具体例
従来の3年ルールとの違いを具体例で理解
従来は、相続開始前3年以内の暦年贈与(年110万円の基礎控除を超える部分を含む全贈与)が相続財産に加算されていました。改正後は段階的に最長7年まで拡大されます。
【シミュレーション例】2031年以降に相続が発生した場合
毎年300万円の贈与を実施していたとして:
| 対象期間 | 旧ルール(3年) | 新ルール(7年・完全適用) |
|---|---|---|
| 加算対象の贈与額 | 300万円×3年=900万円 | 300万円×7年=2,100万円 |
| うち延長4年分への控除 | なし | 合計100万円を控除 |
| 実質加算額 | 900万円 | 2,000万円 |
金額が大きいほど実質的な増税効果が際立ちます。
100万円控除の正確な計算例
例:延長4年間(3年超〜7年以内)に合計450万円の贈与を行った場合
✅ 加算対象額:450万円 - 100万円(合計控除)= 350万円
❌ 誤解例:「4年間で毎年100万円ずつ計400万円が控除される」→ これは誤りです
相続時精算課税の新ルール|110万円控除と暦年贈与の「選択関係」を正しく理解する
制度の仕組み(改正後)
相続時精算課税は、60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫への贈与について、累計2,500万円まで贈与税を非課税とし、将来の相続時にまとめて精算する制度です。
2024年1月の改正で、年間110万円の基礎控除が新設されました。この110万円以内の贈与は贈与税がかからず、さらに相続時の加算も不要です。
⚠️ 最重要:暦年贈与の110万円との「選択関係」
ここは最も誤解されやすいポイントです。
同一の贈与者(例:父)に対して、相続時精算課税と暦年課税は”選択適用”であり、同一人への両制度の同時適用はできません。
一度相続時精算課税を選択すると、その贈与者からの贈与については暦年課税の110万円基礎控除は使えなくなります(同一贈与者について)。
ただし、贈与者が異なれば両制度の組み合わせは可能です(例:父→相続時精算課税、母→暦年課税)。
📊 表2:暦年課税 vs 相続時精算課税|新ルール比較表(2024年改正後)
| 比較項目 | 暦年課税 | 相続時精算課税 |
|---|---|---|
| 適用対象(贈与者) | 年齢制限なし | 贈与年の1月1日時点で60歳以上の父母・祖父母 |
| 適用対象(受贈者) | 年齢制限なし | 贈与年の1月1日時点で18歳以上の子・孫 |
| 年間非課税枠 | 年間110万円(基礎控除) | 年間110万円(2024年新設の基礎控除)+累計2,500万円特別控除 |
| 相続時の持ち戻し | あり(段階的に最長7年以内) | 原則あり(ただし年間110万円以内の贈与分は持ち戻し不要) |
| 制度の切り替え | ✅ 毎年自由に選択可 | ❌ 一度選択すると同一贈与者について暦年課税に戻れない |
| 110万円枠の相続加算 | ⚠️ あり(7年以内は加算対象) | ✅ なし(毎年110万円以内は加算不要) |
| 向いている人 | 長期間・少額を積み重ねたい方 相続までの期間が長い方 | 早期に大きな資産を移転したい方 自社株・収益不動産など評価額上昇が見込まれる資産を持つ方 |
| メリット | 相続財産を減らす効果(7年超の贈与は確実に圧縮) | 110万円以内は贈与税・相続税ともにゼロ。値上がり資産を早期移転すると節税効果大 |
| デメリット・注意点 | 7年以内の持ち戻しリスク。110万円以下でも相続加算対象 | 一度選択すると不可逆。相続時に贈与財産の評価が確定(値下がりリスクも) |
生前贈与新ルールと事業承継・銀行融資への影響
自社株承継と銀行融資の「意外な連動」
自社株の贈与は金額が大きく、持ち戻し期間が7年に延びることで相続時の税負担が大幅に増える可能性があります。しかし裏を返せば、早期に相続時精算課税で自社株を移転することで、将来の株価上昇分ごと節税できるケースも少なくありません。
ここで見落とされがちなのが銀行融資への影響です。株主構成や担保状況が変わると、金融機関は会社の信用力を再評価します。
生前贈与で自社株を後継者に移転する際に、銀行担当者と連携せずに進めると、以下のリスクが生じます:
- 担保・保証の再整理が追いつかず融資条件が変わる
- 個人資産が大きく動いたことで、経営者保証の見直しが必要になる
- 事業承継のタイミングと融資の更新時期が重なり、資金繰りが一時的に悪化する
税理士・銀行・家族が「同じ決算書・同じ事業計画」をベースに話し合う体制こそが、北海道の中小企業が生前贈与新ルールを安全に活用するための土台です。
経営者の年齢・状況別|贈与戦略の考え方
| 経営者の状況 | 推奨される方向性 |
|---|---|
| 50代前半・持株比率が高い | 7年ルールを見越した早期スタート。暦年贈与+相続時精算課税の組み合わせ設計 |
| 60代・事業承継を具体化したい | 自社株評価の引き下げ対策+相続時精算課税による一括移転検討 |
| 70代・既に一部贈与済み | 既存の贈与履歴の整理と、残りの株式・不動産の承継シナリオを再設計 |
| 後継者未定 | 事業承継計画の策定が最優先。贈与の前に「誰に渡すか」を決める |
2026年に検討したい具体的な生前贈与パターン
パターン①|暦年課税を使うシミュレーション
2026年から毎年110万円(基礎控除内)の贈与を開始し、2033年に相続が発生した場合:
- 加算対象:2026年〜2033年の間に行った2024年1月1日以降の贈与
- 2033年は2031年以降のため「7年ルール完全適用」
- したがって、2026〜2032年の贈与(7年分)が対象
- うち2030〜2032年の直近3年分:全額加算
- うち2026〜2029年の4年分(延長4年分):合計から100万円控除した残額を加算
→ 結論:暦年課税で110万円以内の贈与でも、7年以内に相続が発生すれば全額が持ち戻しの対象。基礎控除内でも”ゼロにはならない”点に注意。
パターン②|相続時精算課税を使うシミュレーション
60歳の父から35歳の子へ、相続時精算課税を選択して年間110万円を贈与する場合:
- 毎年110万円以内 → 贈与税ゼロ、相続加算もゼロ
- 10年間で合計1,100万円を相続財産から確実に切り離すことができる
- 自社株(現在評価額3,000万円)を追加で移転する場合:累計2,500万円の特別控除を使い、贈与税は20%課税(実際は納税義務あり)→ ただし将来株価が5,000万円に上昇しても、贈与時評価の3,000万円で相続加算
→ 結論:将来値上がりする自社株は「今のうちに相続時精算課税で移転」が有効。毎年の110万円枠と組み合わせ、段階的に移転するのがベストプラクティス。
北海道・札幌の中小企業が押さえたい公的支援情報
事業承継関連の主な情報源
| 機関 | 主な情報 | URL |
|---|---|---|
| 中小企業庁 | 事業承継税制の特例・補助金情報 | chusho.meti.go.jp |
| 北海道庁 | 道内の経済・企業支援情報 | pref.hokkaido.lg.jp |
| 札幌市 | 市内中小企業向け産業支援 | city.sapporo.jp |
| 国税庁 | 相続税・贈与税の法令・タックスアンサー | nta.go.jp |
地域金融機関との関係構築が北海道の事業承継を左右する
北海道の中小企業にとって、地元金融機関は資金の出し手であると同時に、事業の持続可能性を客観的に評価するパートナーです。
後継者への株式移転に合わせて、以下を金融機関と事前に共有・調整することが重要です:
- 経営者保証(個人保証)の解除・承継の段取り
- 事業性評価融資の活用(担保・保証に依存しない融資)
- 相続後10年間のキャッシュフロー計画
税理士が銀行との橋渡し役を担い、三者で同じ未来図を描けるか否かが、北海道の事業承継の成否を大きく左右します。
生前贈与新ルール時代の税務顧問の選び方
「申告だけ」ではなく「一体設計」ができるか
生前贈与新ルールは、毎年の決算・役員報酬・融資返済計画と連動する中長期プロジェクトです。税務顧問に求められる機能は、「申告書の作成」にとどまりません。
| 従来型の税務顧問 | 2026年以降に必要な税務顧問 |
|---|---|
| 申告書の作成・提出 | 決算シミュレーション+相続試算の同時提供 |
| 単年度の節税提案 | 7〜10年スパンのキャッシュフロー設計 |
| 税務のみを見る | 銀行融資・資金繰りとの一体アドバイス |
| 事後対応型 | 事前の設計提案(予防税務) |
| 標準的な提案 | 家族構成・事業内容に応じたオーダーメイド |
前田泰則税理士事務所の支援メニュー|札幌・北海道全域対応
前田泰則税理士事務所は、「税務申告」「事業承継」「銀行融資・資金繰り」を一体で支援できる税理士事務所です。生前贈与新ルールを前提に、以下のサポートを提供しています。
| サービス | 内容 |
|---|---|
| 相続税・贈与税の試算 | 経過措置を加味した2026〜2031年の複数シナリオ比較 |
| 自社株評価・事業承継設計 | 株価引き下げ対策+承継スキーム提案 |
| 銀行融資・資金繰りとの一体計画 | 相続後10年のキャッシュフロープラン作成 |
| 家族・後継者を交えた相続会議 | 家族全員が同じ未来図を共有する場のファシリテート |
| 決算対策×生前贈与の連動提案 | 毎期の決算と合わせた贈与額・タイミングの見直し |
🗺️ 対応エリア:札幌市・石狩市・江別市・北広島市・恵庭市をはじめ北海道全域(オンライン対応可)
まとめ|2026年の今こそ「将来設計」を始めるべき理由
| チェックポイント | 内容 |
|---|---|
| ✅ 2026年の持ち戻し | 引き続き3年ルール。ただし2027年以降は加算期間が伸び始める |
| ✅ 100万円控除 | 延長4年分の合計額から一括で100万円控除(毎年ではない) |
| ✅ 相続時精算課税の110万円 | 年間110万円以内なら贈与税・相続加算ともにゼロ(同一贈与者は選択適用) |
| ✅ 中小企業オーナーの優先事項 | 自社株・不動産の早期移転×銀行融資との一体設計 |
| ✅ 2026年に動くべき理由 | 「7年ルールへの準備期間」として今始めた贈与が2031年以降の税負担を左右する |
「今はまだ3年ルールだから大丈夫」と考えていると、2027年以降の相続で予想外の税負担を受けるリスクがあります。生前贈与新ルールは、今から動いた人が有利になる制度です。
まずはお気軽にご相談ください
生前贈与新ルールを前提に、あなたの家族構成・事業内容に合ったオーダーメイドプランを一緒に考えてみませんか。
札幌・北海道全域対応。銀行融資・資金繰り・事業承継を一体で支援するシニア税理士が、誠実にサポートします。
※本記事は掲載時点(2026年)の法令等に基づく一般的な情報提供であり、特定の事案についての税務判断を示すものではありません。最終的な判断は必ず個別の専門相談にてご確認ください。国税庁「令和5年度相続税及び贈与税の税制改正のあらまし」参照。
