3月決算の「駆け込み節税」─ やっていい施策、絶対NGな施策を徹底解説
3月決算が近づくと、札幌・北海道の中小企業経営者から
「まだ間に合う節税はありませんか?」
というお問い合わせが一気に増えます。
たしかに、決算直前でもまだ打てる一手はあります。
しかし一方で、来期以降の資金繰りや銀行融資にマイナスとなる駆け込み節税も少なくありません。
この記事では、札幌・北海道で中小企業の税務顧問を務める前田泰則税理士事務所が、3月決算に向けた駆け込み節税の良し悪しを整理し、実務的な決算対策の考え方をお伝えします。
3月決算で駆け込み節税が増える理由
3月決算の会社は、日本全体の法人の中でも最も多くを占めています(全法人の約20%)。
年度末は売上や案件も動きやすく、「利益が読めるのが本当にギリギリ」という中小企業も少なくありません。
その結果、
- 想定より利益が大幅に増えた
- 税額シミュレーションが後手に回った
- 税務顧問との打ち合わせが遅れた
といった要因が重なり、駆け込み節税を検討する流れになりがちです。
札幌や北海道の中小企業でも同じ傾向が見られます。
利益確定が遅れる中小企業の実態
中小企業では、月次決算が遅れがちで、11〜12か月目になってようやく通期の利益が見えてくるというケースが多くあります。
月次が遅れると、決算対策も「期末の数週間」に集中し、どうしても駆け込み節税に頼りやすくなります。
そこで重要なのが、
「節税できるか」よりも「その節税が本当に会社のためになるか」という視点です。
良い駆け込み節税 vs 悪い駆け込み節税【比較表】
駆け込み節税自体が悪いわけではありません。
ポイントは、将来の経営や資金繰り、銀行融資にとってプラスかどうかです。
【比較表】良い節税 vs 悪い節税
| 項目 | 良い節税(投資型) | 悪い節税(浪費型) |
|---|---|---|
| 目的 | 将来の売上・生産性向上につながる | 税金を減らすことだけが目的 |
| 効果 | 数年単位で投資回収が見込める | 短期的な税負担軽減のみ |
| 資金繰り | 計画的な支出、回収見込みあり | 手元資金を圧迫、回収不可 |
| 銀行融資 | 前向きな投資として評価される | 利益圧縮で融資審査に悪影響 |
| 翌期以降 | 継続的なメリットがある | 維持費・解約損などの負担が残る |
| 具体例 | 生産設備、ITツール、人材育成 | 不要な高額機械、条件不明の保険 |
| 税理士の判断 | 事業計画と整合性を確認して推奨 | 原則として推奨しない |
良い駆け込み節税の考え方
(1) 将来の売上・生産性向上につながる投資か
例えば、
- 生産性を高める機械設備の導入
- 売上アップにつながるITツール・クラウドシステムの導入
- 業務効率化のためのDX投資
- 従業員のスキルアップ研修
など、将来の売上や生産性向上につながる投資であれば、決算直前であっても前向きに検討できる駆け込み節税です。
節税効果だけでなく、数年単位での投資回収可能性を税理士と一緒にシミュレーションすることが大切です。
(2) 資金繰りと銀行融資への影響を試算しているか
節税のために多額の現金を支出すると、目先の税金は減っても手元資金も減少します。
- 3か月後、6か月後の預金残高
- 既存借入の返済予定
- 予定されている設備投資・賞与支給
などを踏まえ、駆け込み節税後の資金繰り表を作ることが重要です。
また、銀行融資の審査では、決算書の内容が重視されます。
極端な駆け込み節税で利益がほとんど出ていない決算書は、融資姿勢を慎重にさせる場合もあります。
札幌・北海道の地元金融機関(北洋銀行、北海道銀行、北海道信用金庫、札幌信用金庫など)の融資基準を意識しながら、税務顧問と相談することが安心です。
決算直前でも間に合う主な施策一覧【効果・リスク比較表】
【一覧表】決算直前でもできる主な施策
| 施策名 | 節税効果 | 資金繰りへの影響 | 実行難易度 | リスク・注意点 | 銀行融資への影響 |
|---|---|---|---|---|---|
| 少額減価償却資産の特例(※1) | 高(即時償却) | 中(購入代金必要) | 易 | 取得価額30万円未満、年間300万円まで | ほぼ中立 |
| 必要な備品・消耗品の前倒し購入 | 中 | 中 | 易 | 本当に必要なものに限定 | ほぼ中立 |
| 短期前払費用の特例(※2) | 中〜高 | 中〜大(1年分前払) | 中 | 役務提供が翌期以降、1年以内、継続適用 | ほぼ中立 |
| 決算賞与の支給 | 高 | 大(支給資金必要) | 中 | 期末に通知、1か月以内支給、損金経理 | プラス(従業員定着) |
| 倒産防止共済(経営セーフティ共済)(※3) | 高(掛金全額損金) | 中〜大(月20万×12か月可) | 易 | 解約時は益金、40か月未満は元本割れ | 中立〜やや注意 |
| 生産性向上設備投資 | 高(即時償却・税額控除) | 大 | 難 | 設備の選定・申請手続き必要 | プラス(前向き投資) |
| 不要な高額機械の購入 | 高 | 大(資金圧迫) | 易 | ❌ 維持費・処分コストが継続 | マイナス(浪費と見られる) |
| 条件不明の保険加入 | 中〜高 | 大(長期資金拘束) | 中 | ❌ 解約返戻率・税制変更リスク | マイナス(利益圧縮) |
※1 少額減価償却資産の特例(2026年現在)
- 対象:青色申告法人(資本金1億円以下など一定要件)
- 取得価額30万円未満の減価償却資産を即時償却可能
- 年間合計300万円が上限(2026年3月31日まで延長済)
※2 短期前払費用の特例
- 家賃、保険料、リース料など、継続的なサービスを1年分前払いした場合
- 支払時に全額損金算入可能(ただし継続適用が条件)
- 注意:融資返済や物品購入には適用不可
※3 倒産防止共済(経営セーフティ共済)
- 掛金:月額5,000円〜20万円(年間最大240万円)
- 掛金は全額損金算入可能
- 解約時は益金(利益繰延効果)
- 40か月未満の解約は元本割れに注意
やってはいけない駆け込み節税の典型パターン
ここからは、注意が必要な駆け込み節税の例を見ていきます。
❌ パターン①:使う予定のない高額設備の購入
将来の事業計画と関係が薄い、「とりあえず節税になるから」だけの設備投資は要注意です。
減価償却で費用化が進むとはいえ、
- 維持費や保守費用(年間コスト)
- 置き場・人件費
- 事業撤退時の処分コスト
といった隠れた負担が続く可能性があります。
決算対策としての駆け込み節税であっても、事業の採算性は必ず確認しましょう。
❌ パターン②:解約条件を理解していない長期保険加入
一定の保険商品は、駆け込み節税で使われることの多い手法です。
しかし、
- 解約返戻率のピーク時期
- 税務上の取り扱い変更リスク(2019年の法人保険税制改正後は特に注意)
- 銀行融資との関係
を理解せずに加入すると、
- 必要なタイミングで資金化できない
- 解約時に思ったより税金がかかる(益金算入)
- 金利負担の高い借入をしてまで保険料を支払ってしまう
といった問題が起こりえます。
保険は決算対策だけでなく、事業承継・役員退職金・万一への備えなど、総合的な設計の中で検討すべきです。
❌ パターン③:架空・過大な経費計上
言うまでもありませんが、
- 架空の外注費や広告宣伝費
- 実態のない出張旅費
- 過大な役員報酬・賞与(不相当に高額な部分は損金不算入)
といった手法は税務調査でほぼ確実に否認されます。
駆け込み節税を焦るあまり、グレーゾーンに踏み込むことは絶対に避けてください。
銀行融資への影響を数字で理解する
駆け込み節税を検討する際、銀行融資の視点を忘れてはいけません。
銀行が見る主な財務指標
(1) 自己資本比率
自己資本比率 = 純資産 ÷ 総資産 × 100
- 目安:中小企業では20%以上が望ましい
- 極端な節税で利益を圧縮すると、純資産が増えず自己資本比率が低下
- 自己資本比率が低いと、融資審査で「財務基盤が弱い」と判断される
(2) 債務償還年数
債務償還年数 = (借入金残高 – 現預金) ÷ (営業利益 + 減価償却費)
- 目安:10年以内が健全、15年超は要注意
- 駆け込み節税で利益を極端に圧縮すると、分母が小さくなり債務償還年数が悪化
- 債務償還年数が長いと、「返済能力が低い」と見られ、新規融資が難しくなる
(3) 経常利益
- 銀行は「安定的に利益を出せる企業」を評価します
- 駆け込み節税で利益が極端に変動すると、「経営が不安定」と見られるリスク
- 特に札幌・北海道の地元金融機関(北洋銀行、北海道銀行、北海道信用金庫、札幌信用金庫など)は、地域密着で中小企業の実態を丁寧に見ますが、決算書の数字は第一印象として重要
銀行目線で考える駆け込み節税の適正ライン
- 適度な利益を残す:税引前利益で売上高の3〜5%程度は確保したい
- 自己資本を厚くする:毎期の利益で純資産を積み上げる
- 急激な利益変動を避ける:前期と比較して極端に増減しない
決算直前でも押さえておきたい3つのステップ
3月決算の駆け込み節税を検討する際は、最低限次の3ステップを押さえておきましょう。
ステップ1:まず今期の利益と税額を正確に把握
- 月次試算表を最新まで完成させる
- 決算整理仕訳を概算で反映させる(減価償却費、賞与引当金、貸倒引当金など)
- 税務顧問と一緒に「節税しなかった場合の税額」を確認
この作業を行うだけでも、本当に駆け込み節税が必要か、節税の優先順位は何かが見えてきます。
札幌・北海道の中小企業でも、ここをきちんと行っている会社ほど決算対策がスムーズです。
ステップ2:資金繰り・銀行融資の影響を確認
次に、資金繰りと銀行融資への影響を整理します。
- 決算期から1年程度の資金繰り表を作成
- 銀行との面談予定や既存借入の条件を確認
- 新規借入やリスケジュールの予定があれば洗い出し
このうえで、駆け込み節税に使える金額の上限をざっくり決めると、不要な商品に手を出しにくくなります。
ステップ3:シンプルで効果がわかりやすい施策を優先
決算直前は、複雑なスキームよりも、
- 必要な備品・機器の購入タイミング調整
- 少額減価償却資産の活用(30万円未満、年間300万円まで)
- 決算賞与・従業員賞与の検討(従業員のモチベーション向上にもつながる)
- 短期前払費用の活用(家賃・保険料などの1年分前払い)
など、効果とリスクがわかりやすい施策を優先するのが安全です。
これらは、税理士と短時間で整理しやすい駆け込み節税の代表例です。
中長期の視点:事業承継や将来の決算対策も見据える
3月決算で駆け込み節税を考えるときでも、今年だけでなく3〜5年先の決算対策や事業承継まで視野に入れることが理想です。
事業承継と駆け込み節税の関係
後継者への株式承継を予定している場合、
- 利益の出方
- 自己資本の厚み
- 株価評価(類似業種比準方式、純資産価額方式)
は密接に関係します。
行き当たりばったりの駆け込み節税で利益が極端にぶれると、株価にも影響する可能性があります。
事業承継を意識している中小企業は、駆け込み節税を単年のテクニックとしてではなく、長期的な設計の一部として位置づけることが重要です。
税務顧問との年間スケジュールを作る
本来の理想形は、
- 四半期ごとの利益予測
- 半期ごとの中間決算レビュー
- 決算の3〜4か月前からの決算対策ミーティング
といった流れを、税務顧問の税理士と年間スケジュール化することです。
これにより、駆け込み節税に頼らず、自然な形での決算対策が可能になります。
札幌・北海道の中小企業が使える公的支援情報
駆け込み節税だけに頼らず、公的支援や補助金も視野に入れると、資金繰りに余裕を持たせやすくなります。
公的情報の例
- 中小企業庁 補助金・支援情報
https://www.chusho.meti.go.jp/ - 北海道庁 中小企業向け支援情報
https://www.pref.hokkaido.lg.jp/ - 札幌市 企業・中小企業支援情報
https://www.city.sapporo.jp/ - 北海道中小企業総合支援センター
https://www.hsc.or.jp/
補助金・助成金の活用例
- ものづくり補助金:生産性向上のための設備投資
- IT導入補助金:クラウドシステム・業務効率化ツールの導入
- 小規模事業者持続化補助金:販路開拓・広告宣伝
- 事業承継・引継ぎ補助金:後継者への事業承継に伴う設備投資
これらの制度をうまく活用すれば、銀行融資や資金繰りと組み合わせながら、無理のない決算対策や駆け込み節税の検討が可能になります。
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※本記事の内容は、2026年2月時点の税制に基づく一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案についての税務・会計・法務上の助言ではありません。
税制は毎年改正される可能性があり、個別の状況により適用要件が異なる場合があります。
最終的な判断は、必ず担当の税理士・専門家との個別相談のうえで行ってください。
