不動産の事業承継:会社名義か個人名義かの判断基準とは?
不動産を持つ会社の経営者から、よくこんな相談があります。
「会社で持っている自社ビルを、事業承継のタイミングで不動産事業承継として個人に移した方がいいのか?」
「それとも、会社名義のまま後継者に株式を引き継いだ方がトータルで得なのか?」
一見シンプルなようで、不動産事業承継は「税金」「銀行融資」「資金繰り」「家族構成」など多くの要素が絡み合う難しいテーマです。本記事では、札幌・北海道の中小企業オーナーが実務で迷いやすいポイントを整理し、「会社で持つか個人で持つか」の判断基準をわかりやすく解説します。前田泰則税理士事務所の税務顧問の現場でよくある論点も交えながら、不動産事業承継の考え方を押さえていきましょう。
不動産事業承継でまず押さえたい基本的な視点
現在の保有形態と不動産評価額を整理する重要性
不動産事業承継を検討する第一歩は、今持っている不動産の「名義」と「評価額」を正確に把握することです。会社名義の自社ビルなのか、個人名義で会社に貸しているのか、あるいは会社と個人が共同で保有しているのかで、将来の事業承継や事業承継後の税務顧問の検討ポイントが大きく変わります。また、相続税評価額・固定資産税評価額・帳簿価額・時価のどれを基準にするかによっても、不動産事業承継の方向性が変わります。まずは決算書、固定資産台帳、登記簿謄本、評価証明書などを揃え、現状を見える化することが重要です。
経営と家族の「ゴールイメージ」を共有する
数字の整理と同じくらい大切なのが、事業承継後の「ありたい姿」を家族と共有することです。不動産事業承継においては、会社を継ぐ人と不動産を持つ人が同じなのか別なのかで、取るべきスキームが変わってきます。たとえば後継者は長男だが、次男には不動産賃料という形で公平性を図りたいケースもあります。ここで銀行融資や資金繰りの制約も踏まえて検討しないと、せっかくの事業承継が家族間トラブルの原因になりかねません。経営者・後継者・配偶者が同じテーブルで方向性を話し合うことが、不動産事業承継の第一歩です。
会社名義で不動産を持つ場合のメリット・デメリット
会社名義の不動産事業承継のメリット
会社名義で不動産を保有する最大のメリットは、株式の承継だけで事業と不動産を一体で引き継げる点です。株式を後継者に集中させることで、経営権と不動産をセットでコントロールしやすくなります。また、減価償却費や固定資産税、借入金利息などを会社の経費としやすいため、決算対策にも活用できます。さらに、銀行融資の場面では会社名義の不動産が担保として評価されやすく、将来の設備投資や運転資金に必要な資金繰りの面でプラスになることが多く、不動産事業承継の観点でもメリットは大きいと言えます。
会社名義の不動産事業承継のデメリット
一方で、会社名義の不動産にはデメリットもあります。会社の株式評価に不動産の含み益が反映されるため、不動産事業承継の際に株価が高くなり、相続税や贈与税の負担が大きくなる可能性があります。また、会社の事業が赤字でも、会社名義の不動産から生まれる賃料収入によって法人税が発生することもあり、税務顧問としては慎重な決算対策が必要です。将来、不動産だけを売却したい場合にも、会社名義だと売却益に法人税がかかり、その後の株主への還元時に二重課税となる点も、不動産事業承継では要注意です。
個人名義で不動産を持つ場合のメリット・デメリット
個人名義の不動産事業承継のメリット
社長個人が不動産を持ち、会社に賃貸するスタイルもよく使われます。個人名義にしておくと、不動産事業承継の際に会社の株価に与える影響を抑えやすく、株式の相続税評価を低く抑えられる可能性があります。また、会社の本業と不動産賃貸業を切り離せるため、本業のリスクから不動産を守りやすい点もメリットです。個人には不動産所得として家賃が入り、老後の生活資金としても活用できるため、トータルでの資金繰り設計の自由度が高いのも、不動産事業承継における大きな魅力です。
個人名義の不動産事業承継のデメリット
一方で、個人名義の不動産は相続時に直接相続税の対象となります。地価が高いエリアでは、不動産事業承継時の相続税負担が重くなりがちです。さらに、会社が支払う家賃が過大と判断されると、税務調査で否認されるリスクもあるため、税務顧問による賃料水準のチェックが欠かせません。銀行融資の場面でも、会社名義の不動産ほど担保として評価されないケースがあり、資金繰りへの影響を慎重に見極める必要があります。個人の所得税・住民税も増えるため、不動産事業承継の前提として所得税のシミュレーションも重要です。
不動産事業承継で必ず確認したい税金のポイント
法人税・所得税・登録免許税・不動産取得税への影響
会社名義から個人名義、あるいはその逆に不動産を移すときには、不動産事業承継の一環であっても、さまざまな税金が関係します。譲渡対価が時価とされる場合、法人側に譲渡益が発生し法人税がかかる可能性がありますし、個人側にも所得税の問題が生じます。さらに、所有権移転登記の際には登録免許税、不動産取得税も発生し、合計すると移転コストが大きくなることがあります。これらを含めてトータルの税負担を比較しなければ、不動産事業承継としては片手落ちです。
相続税・贈与税と評価引き下げの工夫
不動産事業承継では、相続税・贈与税への影響も非常に大きな論点です。賃貸用不動産であれば、貸家建付地評価や小規模宅地等の特例などにより、相続税評価額を下げられるケースがあります。一方、会社に不動産を集中させると、株価が高くなり、株式を通じて事業承継する場合の贈与税・相続税負担が増える場合もあります。中小企業向けの事業承継税制の適用可否を含め、税理士とともにシミュレーションすることで、不動産事業承継に最適な組み合わせを検討できます。
銀行融資・資金繰りから見た不動産事業承継の考え方
銀行融資の担保評価とコミュニケーション
銀行融資において不動産は重要な担保資産です。会社名義で不動産を持っていると、銀行はそれを担保として評価し、運転資金や設備資金の融資枠を検討します。不動産事業承継で個人に移す場合、担保余力が減ると見なされることもあり、既存の銀行融資の条件変更が必要になるケースもあります。事前にメインバンクへ相談し、担保構成の変化や将来の返済計画について説明しておくことが、不動産事業承継を円滑に進めるポイントです。
資金繰りと家賃設定・借入金返済のバランス
不動産を個人名義に移すと、会社は家賃を支払うことになります。この家賃が会社の資金繰りに与える影響は、不動産事業承継において軽視できません。家賃が高すぎれば会社の利益を圧迫し、銀行融資の格付けにも影響します。一方、安すぎると個人の所得が不足し、老後資金計画や相続対策に支障が出ます。借入金返済とのバランスも踏まえ、決算対策・資金繰り・税金の3つを総合的に見ることが重要です。ここは税務顧問と金融機関の両方と対話しながら、不動産事業承継の全体設計を行うべきポイントです。
不動産事業承継の判断手順とシミュレーションのすすめ
数字に基づくシミュレーションで意思決定を見える化
感覚だけで「なんとなく個人に移した方が良さそう」と判断するのは危険です。不動産事業承継では、今後10年〜20年程度を見据え、会社・個人・相続の3つの視点から数字をシミュレーションすることが有効です。売上・利益・減価償却費・家賃・借入返済・相続税額などを一覧にし、「会社で持つパターン」と「個人で持つパターン」を比較することで、どちらが総合的に有利かが見えてきます。これにより、家族にもわかりやすく説明でき、不動産事業承継に対する納得感も高まります。
シナリオ別に出口戦略まで考える
不動産事業承継では、「将来売却する可能性」「次世代まで保有する可能性」「建て替えや建て替え資金の必要性」など、出口戦略まで含めて考えることが重要です。例えば、将来の建て替え時には多額の銀行融資が必要になるため、その時点で担保としてどの名義で持っているのが有利かを検討する必要があります。また、後継者が不動産管理に関心がない場合、いずれ売却する前提で所有形態を決めることもあります。複数シナリオで比較しながら、不動産事業承継の出口を設計することが成功のカギです。
札幌・北海道の中小企業が活用したい公的情報
中小企業庁・北海道庁・札幌市の情報収集
不動産事業承継を進めるうえで、公的機関の情報も参考になります。中小企業庁の「補助金・支援情報」では、事業承継に関連する施策やセミナー情報が公開されています。
中小企業庁 補助金・支援情報 → https://www.chusho.meti.go.jp/
また、北海道庁・札幌市のサイトでも、中小企業や事業承継に関する支援メニューや相談窓口が案内されています。
特に札幌・北海道全域対応の専門家と連携しながら、不動産事業承継に関する最新情報をチェックしておくことが、賢い判断につながります。
専門家と公的支援を組み合わせた進め方
公的支援は「知っている人だけが得をする」側面もあります。不動産事業承継の個別相談を税理士や税務顧問と行いつつ、公的支援メニューをうまく組み合わせることで、専門家の報酬を含めてもコストを抑えられる場合があります。札幌や北海道内の商工会・商工会議所なども、事業承継の相談窓口として活用できます。数ある選択肢の中から、不動産事業承継として自社に合った支援策を選ぶためにも、専門家との連携は大きな力になります。
不動産事業承継で税務顧問・税理士を活用するポイント
中小企業の実情を理解した税理士選び
不動産事業承継は、単なる税金計算ではなく、家族や銀行との関係も含めた総合設計です。そのため、中小企業の現場と銀行融資の実務に詳しい税理士・税務顧問を選ぶことが重要です。毎月の試算表をもとに資金繰りと決算対策を一緒に考えてくれる専門家であれば、不動産事業承継もスムーズに進めやすくなります。札幌・北海道エリアであれば、地域の不動産市況や金融機関の傾向を理解しているかどうかも、税理士選びの大切なポイントです。
前田泰則税理士事務所の不動産事業承継サポート
前田泰則税理士事務所では、札幌・北海道全域対応で中小企業の不動産事業承継を支援しています。会社名義・個人名義の比較シミュレーション、銀行融資への影響分析、資金繰り表の作成、決算対策の提案までワンストップで対応可能です。内部リンクとして「不動産事業承継サポート(内部リンク)」や「事業承継・相続対策サービス(内部リンク)」といったページをご用意し、具体的な支援内容や料金もわかりやすく掲載しています。実務経験に基づいたアドバイスで、オーナーとご家族の安心につながる不動産事業承継を一緒に設計していきます。
不動産事業承継は「税金・融資・家族」の三位一体で考える
判断基準は「トータルで得かどうか」
ここまで見てきた通り、不動産事業承継で「会社名義が正解」「個人名義が正解」と一概に言えるケースは多くありません。大事なのは、法人税・所得税・相続税・登録免許税などの税金だけでなく、銀行融資・資金繰り・家族の希望・事業承継後の経営体制といった要素をトータルで見てどちらが得かを判断することです。そのためには、複数パターンを数字で比較するシミュレーションが不可欠であり、税務顧問や税理士との継続的な対話が成功のポイントとなります。
札幌・北海道の中小企業の不動産事業承継は専門家に相談を
札幌・北海道全域対応の前田泰則税理士事務所では、不動産を持つ中小企業のための不動産事業承継相談を随時受け付けています。会社で持つか個人で持つか迷われている経営者の方は、一度「現状分析+シミュレーション」を行うことで、今後10年・20年を見据えた具体的な判断材料を得ることができます。
前田泰則税理士事務所では、札幌・北海道全域対応で、現状分析からシミュレーション、銀行融資・資金繰りを踏まえた具体的な対策までサポートしています。
【無料相談受付中】まずはお気軽にお問い合わせください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案についての結論を示すものではありません。最終的な判断は、必ず個別の事情を踏まえたうえで、税理士・専門家へのご相談のうえで行ってください。
