素人でも進められる農家の第三者承継
第三者承継の全体像をつかむ
増えている背景と「買うもの」の整理
第三者承継は、親族内に後継者がいない農家でも経営を残せる手段です。素人が最初に混乱するのは「農地も全部買うのか?」という点。実務では、農地・施設・機械・在庫・販路・雇用などを分けて承継します。第三者承継は“権利の束”を整理する作業で、事業承継の設計力が成否を分けます。
失敗しがちな落とし穴
よくある失敗は、資金繰りの見通しが甘いまま設備投資を先行すること、口約束で始めて契約が曖昧なこと、税理士不在で会計が崩れることです。第三者承継では「数字の管理」と「契約の明確化」が必須。中小企業のM&Aと同様に、引継ぎ前の棚卸しと条件交渉が要です。
まずは資金計画と生活設計を固める
収支モデルと資金繰りの型を作る
素人が農業でつまずくのは、利益よりも資金繰りです。作付けから入金までタイムラグがあり、繁忙期は支出も増えます。第三者承継の検討段階で、①月次の入出金予定、②生活費、③返済額を置いた資金繰り表を作成し、赤字月の手当てを決めます。“黒字でも資金ショートする”を避けましょう。
銀行融資・補助制度の当て方
銀行融資は「返せる根拠(計画)」が命です。承継後の売上見込み、販路、原価、設備更新計画を一枚にまとめると通りやすくなります。補助金は事業計画とセットで検討し、使途が設備に偏りすぎないよう注意。公的情報は中小企業庁(https://www.chusho.meti.go.jp/)、北海道庁(https://www.pref.hokkaido.lg.jp/) も確認し、第三者承継の資金設計に組み込みます。
農地・施設・契約のポイントを押さえる
農地は「所有」より「使える権利」の確保
農地は一般の不動産と違い、農地法等の制約が絡みます。第三者承継では、購入だけでなく賃借・利用権設定など現実的な手段を検討し、営農が継続できる形を作ります。ここが曖昧だと、承継しても作付けできないリスクが発生。行政窓口や関係機関とも連携し、札幌市(https://www.city.sapporo.jp/) を含め地域制度を確認します。
設備・在庫・家畜の評価と引継ぎ条件
機械や施設は、状態と残存価値、修繕履歴が重要です。在庫(肥料・資材)や出荷前の作物、家畜があれば評価方法を決め、契約書に明記します。第三者承継では「何を、いくらで、いつ引き渡すか」を文章化するほどトラブルが減ります。保証や瑕疵の扱いも、最初に線引きしましょう。
税務・会計を引き継ぎ、経営管理を整える
税務顧問を早期につける理由
第三者承継は、開始直後の会計が最も荒れます。現金取引、在庫、減価償却、消費税の扱いなど、農業特有の論点が重なり、帳簿が遅れると資金繰りも崩れます。税務顧問を早期につけ、月次で数字を締める仕組みを作ると、銀行融資の説明資料にもなります。税理士は「申告」だけでなく経営の翻訳者です。
決算対策と消費税・インボイスの注意
承継初年度は利益が読みづらく、決算対策の打ち手も早めに検討が必要です。設備投資のタイミング、減価償却、役員報酬や専従者給与の設計、消費税の課税・免税判定などで手残りが変わります。第三者承継は契約形態で課税関係も動くため、契約前から税理士と擦り合わせるのが安全です。
現場の引継ぎは「販路」と「人」を最優先
取引先・JA・直販の引継ぎを段取り化
素人が成果を出す近道は、先代の販路を守ることです。出荷先、等級基準、納品条件、支払サイト、クレーム対応を一覧化し、同席訪問で関係を引き継ぎます。第三者承継では“信用の移転”が最難関。名刺交換だけでなく、取引条件を文書で共有し、ブレを減らします。
月次KPIで迷いを減らす
農業は改善点が多く、やることが散らばりがちです。売上だけでなく、反収、廃棄率、作業時間、原価、修繕費を月次KPIにして、改善を回せる形にします。中小企業の経営改善と同じく、第三者承継は“習慣化”が勝ち筋。帳簿→試算表→資金繰りの順に整えれば、判断が速くなります。
リスク管理と将来の事業承継まで見据える
災害・病害・価格変動への備え
天候、病害、相場はコントロールできません。だからこそ第三者承継では、保険、設備の冗長性、代替仕入れ、作付け分散などを最初に設計します。資金繰りに余白がないと、ひとつの不作で詰みます。固定費を把握し、最悪ケースでも回るラインを決めることが、継続の土台です。
次の承継(出口)を作る
承継したら終わりではなく、あなた自身の将来の事業承継も始まります。法人化の検討、資産と運転資金の分離、借入の適正化、後継者候補の育成など、出口設計を持つと意思決定がブレません。第三者承継は「入り口」と「出口」を同時に描くほど、強い経営になります。
まとめ
前田泰則税理士事務所の支援
前田泰則税理士事務所は、札幌・北海道全域対応で第三者承継を「資金繰り」「銀行融資」「税務顧問」「月次管理」まで一体で支援します。また、農業経営アドバイザーとしても活動しており、数字だけでなく、現場目線の収支改善や経営計画の設計まで伴走可能です。検討段階の収支モデル作成から、承継後の会計運用・決算対策までワンストップでサポートします。
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第三者承継の可否判定(資金計画・契約・税務)を一緒に整理します。
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※本記事は一般的な情報です。最終判断は個別相談で承ります。
